一冊目は、ホフマン「砂男」です。砂男といって思い出すのは、ドラえもんの45巻に眠れない人を寝させる砂男が出てきますね。
この話が元だと思っていましたが、どうやらそうでないようです。これよりもさらに昔のドイツ民間伝承の中に砂男という妖精がいて、ホフマンはそれを下敷きにしてこの作品を書いているようです。
昨年から、アンにはまっていたんですが、物語の中でアンが小説や詩に夢中になる場面やアン自身が物語を書く場面が出てきます。アンは悲しい物語を書いたつもりなのに、なぜか読んだ人はみんな笑ってショックを受けるという場面があって、この挿話が僕は一番好きなところです。とってもよくわかる。
それはさておき、アンが物語や詩に夢中になった頃、どんな話が読まれていたのか、非常に気になりました。物語の中で具体的なタイトルはほとんど出てこないんですね。唯一出てくるのは、ダイアナが貸してくれた『不思議の国のアリス』ですが、これが書かれたのが、1850年ころです。アンが書かれたのは1900年頃。この頃の文学は今では古典として読まれていますね。
話は変わりますが、今カルチャーラジオで幻想文学の講義をやっていて私は欠かさず聞いています一回目以外は。幻想文学っていったい何を幻想文学というのかよくわからないですよね。自分でも「国書刊行会が出してるような本」くらいのイメージしかなくて漠然としていました。ラジオを聞いてもやっぱり何がそれなのかよくわからないままですが、ホラーやサスペンス、SFといったジャンルがまだ区別がはっきりしない時代、文学とは異なるエンターテインメント性の高いものをひっくるめてそう言ったようです。
アンの中で怖い話を読むなと先生に言われるところがありましたが、それこそ幻想文学だったのではないでしょうか。
それから、もう一つ勘違いしていたことがありまして、オペラのホフマン物語はホフマンを題材にした物語と聞いていたのでてっきりホフマンの人生を描いたものかと思っていたのですが、ここにおさめられている三編(もう一つは「大晦日の冒険」という話)を主人公をホフマンにして一つの話にしたということみたいです。大胆なことをしますよね。願わくは、ホフマン物語の「ホフマンの舟歌」を一度生で聞いてみたいものです。