2014年8月17日日曜日

14 盛口満「ドングリの謎」


僕らが死体を拾うわけよりも後に書かれた本です。正直ドングリに興味があったわけではなかったですが、自然科学的な考察に加え、人間の生活との関わりという人文科学的な側面からの考察もあることでさらに面白さが増してるという感じでした。
これを読んだ後、軽井沢で木の実の面白さについて気付かせてもらう事になるのですが、この本はその布石になってたのかもしれないと振り返って思いました。

13 クレイン「赤い武功章」


アメリカ自然主義への関心がつきないところですが、こちらもよかったです。単に若い兵士が戦争で活躍する話ではなくてもう少し屈折しています。そこが非常に重要な部分で表題の意味もまさにそこに関わってくるんですね。

2014年6月30日月曜日

12 田中相 地上はポケットの庭


とても丁寧に書かれていて素晴らしいと思いました。植物を書くことへのこだわりが素敵だなと思いました。

11 盛口満 僕らが死体を拾うわけ


去年からこの人に興味があっていろいろ読んでいますが、これもまた興味深く読みました。個人的には、ナナフシの単為生殖の話が興味深かったです。オスは基本不要な存在で、メスの後継者にバリエーションを与えるだけかと思うと、僕個人のいる意味って何なのかって思いますよね。
また、このとき中学生だった生徒がその経験をきっかけにほねほね団を組織したり、ドイツへ留学して標本の研究者になったりと、現在まさに活躍されている人たちの源流がここにおさめられている話なんだと思うと胸が熱くなりますね。

2014年6月29日日曜日

10 サキ傑作集


最後に、それはこういう訳でした、ちゃんちゃんみたいな結び方になってるのは、あんまり面白くないなと思いましたが、好きな話もいくつかありました。
最近起承転結をきれいに見せようとしてなくても、主題があってそれが精緻に克明に描かれていればそれで十分じゃないかと思っています。オーヘンリやサキは自然主義の文学の対極にあるような存在なのでしょう。

9 ジャックロンドン 荒野の呼び声


これは、本当によかったです。今年読んだ中で今のところ一番に面白かった本だと思います。主人公はバックという名前の犬なんですが、この犬のそりへの取り組み方が半端ではなくて、それを何か自分と比較してしまうんですね。
途中で、全然駄目な主人に使わされてしまうことになるんですが、その場面のバックの姿とか本当にかっこいい。
人間もここに出てくる犬も働いて生きていくわけなんですが、ややもすると真面目に働くことがばからしいとか、仕事以外の部分が充実している人生がすばらしいという考えに陥りやすいものだと思います。自分自身今の仕事の何が楽しいのかよくわからなくなってきてますが、そのような自分にまさに響いてくる物語で、私の中の悩みはいっそう悩ましくなるのです。
堕落していく文明の批判者とか見出しに書いてあるんですが、そのようなメッセージにピンとこなくても読んだ人それぞれに思うところはあると思います。

2014年6月8日日曜日

6 アメリカン・マスターピース 古典篇


アメリカ古典の入門として読んでみましたがとても良かったです。
古典というのは独特の奇妙な感じがあります。ゴシックと言うのでしょうか。ポーのモルグ街の殺人の雰囲気や、ウェイクフィールドやバートルビーの人物造形なんかはそんな感じがします。マークトゥエインのカエルは幻想文学のような雰囲気はありませんが話自体がとても奇妙で印象深いです。
そんな中でひときわ目立つのがジャックロンドンの火を熾すでした。非常に現実的に情景は描かれるのですがそれが読む側を引き込んでとても面白いです。

7 ホーソーン『緋文字』

前回のマスターピースに収録されていたホーソーンについて、他の作品にも興味が出てきたので読んでみました。名前だけは知ってたんですが、内容は全然知らなかったです。恥ずかしい話緋文字の「緋」ってなぜか紐と勘違いしてまして。しかし予備知識なしに読んだこととは関係なく、正直読みにくいなーと感じました。

パッチをあてるっていう設定が好きですね。Aって結局何のAなのかはっきりしてないんですよね。開拓時代のアメリカのイギリスから逃げてきた清教徒がどんな人たちでどんな生活をしてどんな考え方を持った人たちなのかということを勉強すればもっと面白く読めるかもしれません。

8 夢野久作 キューピー


夢野久作はこわい話を書く人という印象がありますが、出家してほうえん山人という名前で童話も書いていたそうです。これもそのひとつでしょう。
白髪小僧という話も読んでみたいです。

2014年4月8日火曜日

5 サリンジャー『フラニーとズーイ』

後半の宗教に関するところは全く記憶になかったです。やっぱり一番覚えているのは、お風呂でタバコをすいながら手紙を読むところと、そのあと流しで母親と話す場面でした。今読んでも宗教のところはやっぱり読みにくいと思いましたが、でも中学や高校の頃はもっとバカ正直に物事を考えていて、なんでそんなにバカ正直に考えるのかと大人から言われることに反発したりというようなことは、思い当たるところもありますよね。そう言うことが思い出せてよかったかもと思いました。

3 石田衣良『REVERSE』

また、石田衣良です。男が女を演じて女が男を演じるというはなし。最近勧められて読んだシェイクスピアの『十二夜』と通じるところがあって興味深かったです。現代社会を映し出した新しい恋愛物語みたいな解説をしている人もいるようですが、やっぱりこういう主題は喜劇になってしまいますね。

2 石田衣良『約束』

どうしても気になってしまうのは、ものの名前にこだわりがあるというか、この人がどこのブランドの何を身につけていて、なんて言う車に乗っていて、何という植物を育てていて、なんと言う町の何という名前のカフェで何んというコーヒーを飲んでいて、ブラブラブラ・・・とこんな調子でして、その人が何者であるかはその人の身につけているものの名前が示してくれるといっているかのようにも思えてしまいます。そのカメラマンの持っているカメラがリンホフのマスターテヒニカだから何だというのでしょう。そんなブランドの名を連ねたところでその人について何を描いたのでしょう。そんな名前を持ち出さなくてもその人の思いや人となりは描けるでしょうに。

4 魔夜峰央『パパ!?パタリロ!』

昨年書かれたパタリロの番外編です。本編は30年以上連載が続いていて、絵柄はだいぶん変わりましたが中身の面白さはは変わってませんね。
※ルールではこのタイトルは一冊で完結しているので1です。

2014年2月9日日曜日

実施規則


実施規則

(目的)
第1条 この規則は、朗読の実施規則について規定する。

(規則)
第2条 この規則の適用を受けるものは、次条の条件の書籍を本規則の適用を開始するときから十年以内に千冊読まなければならない。

(条件)
第3条 この規則の実施にあたり対象となる書籍はあらゆる書籍である。ただし以下の各号に掲げるものを除く。
 (1)完結していない書籍。ただし、未完のまま絶筆になった書籍を除く。
 (2)本規則の適用を開始したときに、読了となっている書籍。ただし、新訳を除く。 (3)前号までに掲げるもののほか、細則によって対象と認められる書籍

(雑則)
第4条 分冊されているものは全て読んで一冊と数える。
第5条 全集は、各巻を一冊と数える。ただし前条にかかるものを除く。

 附 則
第1条 第2条に定める本規則の適用のときは、平成26年1月25日とする。

1 ホフマン『砂男/クレスペル顧問官』

一冊目は、ホフマン「砂男」です。砂男といって思い出すのは、ドラえもんの45巻に眠れない人を寝させる砂男が出てきますね。

この話が元だと思っていましたが、どうやらそうでないようです。これよりもさらに昔のドイツ民間伝承の中に砂男という妖精がいて、ホフマンはそれを下敷きにしてこの作品を書いているようです。

昨年から、アンにはまっていたんですが、物語の中でアンが小説や詩に夢中になる場面やアン自身が物語を書く場面が出てきます。アンは悲しい物語を書いたつもりなのに、なぜか読んだ人はみんな笑ってショックを受けるという場面があって、この挿話が僕は一番好きなところです。とってもよくわかる。

それはさておき、アンが物語や詩に夢中になった頃、どんな話が読まれていたのか、非常に気になりました。物語の中で具体的なタイトルはほとんど出てこないんですね。唯一出てくるのは、ダイアナが貸してくれた『不思議の国のアリス』ですが、これが書かれたのが、1850年ころです。アンが書かれたのは1900年頃。この頃の文学は今では古典として読まれていますね。

話は変わりますが、今カルチャーラジオで幻想文学の講義をやっていて私は欠かさず聞いています一回目以外は。幻想文学っていったい何を幻想文学というのかよくわからないですよね。自分でも「国書刊行会が出してるような本」くらいのイメージしかなくて漠然としていました。ラジオを聞いてもやっぱり何がそれなのかよくわからないままですが、ホラーやサスペンス、SFといったジャンルがまだ区別がはっきりしない時代、文学とは異なるエンターテインメント性の高いものをひっくるめてそう言ったようです。

アンの中で怖い話を読むなと先生に言われるところがありましたが、それこそ幻想文学だったのではないでしょうか。

それから、もう一つ勘違いしていたことがありまして、オペラのホフマン物語はホフマンを題材にした物語と聞いていたのでてっきりホフマンの人生を描いたものかと思っていたのですが、ここにおさめられている三編(もう一つは「大晦日の冒険」という話)を主人公をホフマンにして一つの話にしたということみたいです。大胆なことをしますよね。願わくは、ホフマン物語の「ホフマンの舟歌」を一度生で聞いてみたいものです。